(1) カタログは偉いなあ・・・

 昔は百科事典が書斎のステータスで、滅多に開く事も無いのに書架のスペースを我物顔に占領していたものですが・・・え、そんな物は無かったって?平凡社の百科事典、オメガの時計、ロンソンのライター、万年筆はペリカン・・・これが今で言う「ブランド」だったの。大人達が「日本の物は品質が良い」と、ブランド信仰を卒業したと思ったら、今度は・・・

 で、何かの折に調べ物をすると、隣の項目や関連の項目が気になって、分厚い本からなかなか離れにくかったものです。 段々住まいが窮屈になり、お母さんや子供達が家庭を占領するようになると、大部の文学全集、辞典がまず邪魔者になり、大型のオーディオ機器やピアノが邪魔になり、代わりに壁面にくっつけられるプラズマモニターで、ホームシアターの鑑賞というのがこれからのトレンドらしいですが、要は肩の凝らない娯楽が家庭を占領しただけのこと、人間も益々モニターの様に薄っぺらになるにちがいない。

 さて、家庭で読まれる分厚い本は、何と言っても通販のカタログ。この教養とは何の関わりもない”本”が、あんがい時間つぶしに面白いんですね。

 モデルさんの下着姿を眺めて、小さな布きれがもたらす”機能”に感心したりはまあご愛敬として、衣食住する事にこれほど色々な知恵を働かせているのかと、ほほえましさを通り越して感心することしきり。 最近はすっかり陰が薄くなってしまいましたが、「暮らしの手帳」という雑誌が、
今で言う消費者モニターの先駆けで、実験の結果を示して「これを買ってはいけない!」なんてやっていて、家電では「商売の神様」の会社が作ったものなど、よく落第点を貰っていましたが、それで潰れるどころかちゃっかりパクリでモデルチェンジして「マネシタデンキ」と言う大企業になった。 この雑誌は公正な記事を書くため広告を取らないことで名を挙げましたが、カタログは全部が広告。何でも載っている大手通販から、文房具、楽器、ペット、レジャー、ホビー・・・果ては仏具、式場・・・

 コンビニの書籍コーナーには「通販生活」という有料のカタログがあって、これは立派だ。今日はこの本の話をしよう。

 カタログで金を取るのも立派なら、少し高めという商品をずらりと並べて、それはそれで売れて居るのでしょうが、カタログ以外の編集ページがすごい。消費者の立場、目線というスタンスで、反原発、エコロジー、政治・行政批判・・・きちんと取材した記事が並んで居る。300ページの本が半分以上はカタログと言うのは当然として、180円ですよ。
 「カタログを背負った総合雑誌」の貫禄です。週間○曜日の薄さ(記事内容の事では無い)を考えると、コストパフォーマンスの高さは相当なものです。

 歌舞伎や時代劇が時代設定を替えてのお上批判であるのと同じで、カタログのオマケという姿で、大手マスコミが、体制化したのかスポンサーに遠慮してか、なかなか書かないテーマを正面からとらえているから、これはこれで立派な啓蒙書というべきですね。

 家庭から固い書物が駆逐され、インターネットを始めとする電子のメディアが幅を利かすようになっても、やはり教養のソースとしては読書が一番。「何か買って上げるからこのカタログをおしまいまで読みなさい」と言うのが今のママに出来る家庭教育と言うわけでしょうか、「通販生活」はパパも十分楽しめる生活雑誌です。


                                            2003.1

表紙に